鋼を硬くするための熱処理
正式にはquench(急冷)-hardening(硬化)

約250℃くらいに冷えてきたときに硬くなる　この点をMs点という
この時長さで0.2〜0.3%膨張し､無理がこうじると焼割れを起こす焼曲がりは急冷のムラによって生じる

焼きが入って硬くなるには炭素量が約0.3%以上必要
合金鋼でCr､Mo､Niなどが含まれていると0.15%Cでも焼きが入る

焼入れ状態は一般に性状が不安定で､室温変化や時間の経過によって寸法や硬さが変動する(時効変化､置き狂い)
これは主として焼き入れで生じた残留オーステナイト(γR)の変化にもとづくものである
従って安定化のためにはこのγRをなくすことが先決

γRは焼入れ部品におよそ15〜30%含まれており､C%が多いほど､焼入れ温度が高いほど､また水焼入れ品より油焼入れ品に多い       

γRは室温以下に温度を下げればマルテンサイトになるし(サブゼロ処理)､温度を上げて約270℃以上に焼戻しすればベイナイトになって安定化する

�@最高焼き入れ硬さ   HRC=30+50×%C
     (フルマル硬さ､90%マルテンサイト焼入れ)

�A最低焼き入れ硬さ   HRC=20+50×%C
     (ハンマル硬さ､50%マルテンサイト焼入れ)

�B非焼き入れ硬さ     HRC=10+50×%C
     (ノンマル硬さ､パーライト焼入れ)

 ハーフマルテンサイト硬さ以上ならば焼きが入ったと言って差し支えない(世界共通の取り決め)

硬さは全てC%だけの関数で､特殊元素には関係が無い

 焼き入れ温度からMs点(約250℃)までの温度範囲(臨界区域)を出来るだけ早く均一に冷やし､Ms点以下の温度範囲(危険区域)をゆっくり冷やすことが必要

粘さ焼き入れは硬さよりはむしろ粘さを目的とする焼き入れである

焼入液として400〜600℃の熱浴(通常はソルトバス)を使用
この中に焼き入れして1〜2h保持後､空冷
これによりベイナイトという組織が得られ､焼き入れしたままで粘い物が得られる

焼戻し(テンパ)は必要としない
焼入･焼戻し(調質)した物と同じ硬さでも粘さが大きい
　(ただし特定の硬さHRC40〜50に限られる)
　(その他の硬さの時には調質品のほうが粘い)

ベイナイト焼入れできる部品の大きさ
　S-C材ではφ5mm(厚さ3mm)以下
　SCM435でφ13mm(厚さ9mm)以下

高Mn鋼(SCMnH)に対する独得の熱処理で､1100℃から水中急冷する方法
これにより完全なオーステナイト組織が得られ､粘い性質になる

水に焼入れして硬くならずに粘くなるので､水じんといわれる
マグネットに付かない
粘い(難削材)のでグラインダ研削加工によらなければならない

打撃によってオーステナイトがマルテンサイトに変化して耐摩耗性を発揮
マルテンサイト焼入れではないから焼割れは生じない

オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)に対して行われる水焼入れ
1100℃から水急冷して完全なオーステナイト組織にする処理
固溶化熱処理(JIS)あるは溶体化処理といわれる

焼戻し温度が270℃以下の焼き入れ部品(浸炭､高周波)などは安定化のためにサブゼロ処理をすることが必要
硬さが増し寸法が少しプラスになり､耐摩耗性が向上し性状が安定化する

寒剤としてはドライアイス(-78℃)を使う普通サブゼロと液体窒素を使う超サブゼロの2つがある
 焼入部品をそのまま寒剤につけ､この温度に1h保持し､取り出して水中、又は湯中に投入する　　その後正規の焼戻しを行う

サブゼロ処理は体質改善熱処理としては究極の処理

S-C材やSA材の場合､内外が同一温度になってからは保持時間はいらない

SK材やSUJ材では約30分間保持すればよい

保持時間は部品の大きさに関係なく､鋼質(パーライト系かカーバイト系)によって異なる

水は油よりも早く冷える(3倍の冷速)が､均一冷却が難しく､焼曲がりや焼割れを生じやすい

水温は人肌と言って約40℃以下が好ましいが､最近は60〜70℃のお湯入れが油焼入れの代わりに利用されている

水に食塩が約10%(重量比)入ると､冷却速度が倍増される
油は均一冷却ができるので､焼曲がりや焼割れが生じにくい

一般に使われる焼入油はJIS1種2号で､液温は60〜80℃が適当

最近では120〜150℃の熱油がhot oil quenchとして焼きひずみ防止に活用

焼き入れ液に熱浴(200〜500℃のソルト)を使う方法

熱浴の温度
　　200〜250℃→マルクエンチ
　　350〜500℃→オーステンパ

Ms点に近い温度のソルトバスを使用して行う硬さ焼入れ
亜硝酸ソーダ1:硝酸カリ1(浴融温度約150℃)のソルト

部品の内外が同一温度になるまで等温保持(肉厚25mmにつき約4分)した後引き上げて空冷

マルテンサイト区域(危険区域)をゆっくり冷やすことになるので､割れず硬く焼入れ出来る

亜硝酸ソーダ1:硝酸カリ1のソルトを350〜500℃にして使用

この中に焼き入れし､等温変態が完了してから引き上げて空冷する

流動床炉を温度を上げずに常温で流動させ､この中に焼入れする

真空炉中で加熱すれば光輝加熱ができ､そのまま真空炉中でガス冷(主として窒素ガス)や油冷すれば光輝焼入れとなる

真空炉焼入れは光輝焼入れのトップクラス

ステンレス鋼､構造用合金鋼などの光輝焼きなましや光輝焼き入れに賞用

焼入れ液の中にワークを浸漬して焼入れする方法

流体力学的に流動させて均一急冷するような工夫が大切

焼入れ液をスプレーの形で噴射して焼入れする方法
ズブ焼入れよりも冷却速度が数倍早い

噴射圧力や噴射角度を変えることによって冷却速度をコントロールできる

任意に局部冷却ができる
焼割れや焼曲がりの発生を少なくすることができる

焼き入れの繰り返しは3回を限度としている